http://amagai65.iinaa.net/ 天海訴訟を支援する会 代表 八田英之 千葉市は、天海さんの要求や人権・尊厳を無視し、すべての障害福祉サービスを打ち切りました。天海さんは、生命をも脅かすこの暴挙を不服とし、2015年11月27日千葉地裁に提訴したのです。 この訴訟は、千葉地裁で敗訴(2021年5月18日)、東京高裁で逆転勝訴(2023年3月24日)、そしてこれを不服とした千葉市が最高裁に上告受理申し立てをおこない、その結果、最高裁は2025年7月17日、「本件を高等裁判所に差し戻す」との判決を言い渡しました。 「サービス打ち切りは許されるのか」、天海さんの訴えは再び東京高裁での審議として継続されることになりました。すべてのサービスを打ち切った処分が行政の裁量権の範囲を逸脱・濫用したものなのか否か、社会通念に照らして著しく妥当性に欠くものなのか否か、本件の核心部分が改めて審議されることになります。 千葉市は、サービス打ち切りの理由を障害者総合支援法第7条に求めましたが、法7条の規定があったとしても、人権を侵害する行政処分はゆるされないはずです。厚生労働省が2007年に発出した「適用関係通知」や2015年の「事務連絡」・「事務処理要項」を踏まえれば、いきなりサービスを打ち切ることはあってはならないし、同省の方針にも反しているといわざるをえません。この打ち切りは障害者の生存権を奪うものです。 千葉市がいきなりサービス打ち切りを強行したことは、憲法と障害者権利条約の趣旨においても違反していることから、以下のことを強く要望します。 【要望項目】「サービス打ち切り」を行政の通念にしないように、あらためて東京高裁の公正な判断を求めます。 何としても東京高裁で公正な判断をしてもらうためにも、皆様のさらなるご支援を心からお願いします。 どうかよろしくお願いします。 原告 天海正克さんと天海訴訟を支援する会は、全国の皆さん方の大きな支援をいただき、ここまで活動してまいりました。ありがとうございます。 ★天海訴訟とは、 千葉市の天海正克さんは、65歳を迎えたとき、千葉市から「介護保険を申請するように」と言われましたが、天海さんはこれまでの障害福祉サービスを希望し、介護保険申請を断りました。すると千葉市は、「介護保険を申請してくれないと、福祉サービスの支給量を算定することができない。」として、天海さんの障害福祉サービスの支給申請を却下し、すべての給付を打ち切ったのです。そのため月に14万円もの利用料が天海さんの全額自己負担となりました。天海さんいわく「日常生活に生活介護が不可欠な障害者が、すべての行政サービスを剥奪され、まるで砂漠の真っただ中に放り出されたような仕打ちを受けた」のです。そこで天海さんは、2015(平成27)年11月に、千葉市を相手にこの処分が違法であるとして、この処分の取消し等を求めて千葉地裁に提訴しました。それから天海訴訟は10年の時が流れて今日に至っています。天海訴訟のこれまでの経過を報告します。 要望事項 ★千葉地裁判決では敗訴した。 2021年(令和3)5月18日に千葉地裁で言い渡された判決は次のようなものでした。 住所(番地までご記入ください) 「自立支援給付と介護保険とを任意に選択することを許すことは、公費負担の制度よりも社会保険を優先するという社会保障の基本的な考え方に背馳するとともに、他の者との公平にも反し相当でない」というものです。 天海さんの生活実態を無視し、天海さんの訴えをすべて却下し「手続きに協力しない障害者はこのような状況に置かれるのは当然である」と言わんばかりの、千葉市の主張を全面的に支持する不当判決でした。 ★東京高裁に控訴し、逆転勝利判決を勝ち取りました。 天海さんはただちに東京高裁に控訴しました。2023年(令和5)3月24日に、東京高裁は「制度的不均衡」であることを指摘し、逆転勝利判決を私たちの運動でかちとりました。しかし千葉市は、最高裁判所に上告受理の申請をし、受理されました。最高裁で、2025年6月26日に1回の口頭弁論が行われました。 ★最高裁判決は、高裁への差し戻しでした。 2025年(令和7)7月17日の最高裁判決は、「千葉市が利用量を算定できないので却下し、0にした」ことついて、「千葉市のその判断が、社会通念上合理性を欠くかどうかをもう1回検討し直しなさい」と高裁に差し戻されたのです。天海訴訟は、東京高裁の場でさらに闘いは続きます。 ★天海訴訟の中で、確認され 問題点 1.千葉地裁の判決は、本人の意向・意思を無視して、天海さんの生活を法制度の仕組みから決めつけるものでした。このことは、障害者権利条約の「私たちにかかわることを私たち抜きに決めないで」という障害者権利条約の考え方にも背馳するものです。すなわち人権としての社会保障の「人間の尊厳」の理念、そのもっとも根幹である「自己決定・選択の原理」の否定になります。 自己決定とは、自分の生き方、生活の質を自分で決めるということです。そのためには、いろいろな選択肢が用意されていなければなりません。選択の自由が大前提となります。人権保障そして社会保障制度は、この選択肢を用意、保障するものであることを確認したいと思います。(憲法13条) 2. 千葉地裁の判決は「自立支援給付と介護保険とを任意に選択することを許すことは、公費負担の制度よりも社会保険を優先するという社会保障の基本的な考え方に背馳するとともに、他の者との公平にも反し相当でない」というものです。これが東京高裁でも最高裁でも引き継がれています。「公費負担の制度よりも社会保険を優先するという社会保障の基本的な考え方に背馳する」という「社会保障の基本的考え方」、公費負担よりも社会保険を優先させるという世界的な常識はありません。公費か保険かは、社会保障財源確保に関する立法政策上の問題です。 障害福祉制度と介護保険制度とでは目的・基本的理念に違いがあります。 障害者総合支援法は、障害者権利条約・障害者基本法を前提とした障害者の基本的人権を享受するためのサービス給付法であり、社会生活も含めた障害者の生活全般を支えることを目的としています。これに対し、介護保険法では要介護者の尊厳の保持は掲げられていますが、本来は家族介護の社会化(介護にかかる「手間」の代替え)を目的として創設された制度です。65歳になった障害者の障害福祉を介護保険法に矮小化してはなりません。 3.障害者自立支援法違憲訴訟の大きな成果・意義を考えたいと思います。基本合意文書により、障害者自立支援法の応益負担原則の障害自己責任論の過ちが確認され、障害者の多くがそうである低所得世帯の障害福祉施策利用措置が平成 23(2011)年度から無償化されたことは、障害者自立支援法違憲訴訟の大きな成果・意義です。 障害者が、障害による社会的不利益を公的に除去する施策のために、自己負担をすること自体が、障害者権利条約の想定する障害者の社会モデルに反することになると思います。(憲法25条) ★再び東京高裁で頑張ります。 天海さんの支給量を「ゼロにする」というのは、人権侵害、生存権の侵害にほかなりません。納得できません。適切な裁量権を行使するということができたはずです。天海さんの申請を全部却下した行政の「比例原則 (国家が国民の権利や自由を制限するとき、その制限の内容や程度が目的達成に対して「必要かつ適切な範囲」にとどまっていなければならない)」違反を主張して、行政の裁量権の逸脱・濫用を追求していきます。 千葉市がいきなりサービス打ち切りを強行し「0にしたこと」たことは、憲法と障害者権利条約の趣旨においても違反していると思います。 天海訴訟は、国の歪んだ社会保障行政を変えていくたたかいです。何としても東京高裁で公正な判断をしてもらうためにも、「東京高裁への要望署名」を取り組みます。全国の皆様のさらなるご支援を心からお願いします。(纐纈)