天海訴訟を支援する会ニュース 2024/8/15 49 7月25日に、皆さんから寄せられた署名12,094筆を、最高裁判所に届けました。 社保協千葉の前事務局長藤田さんの司会で始まった最高裁西門前の集会で、八田代表は、「要請行動で千葉市の上告を棄却することに繋がることを期待したい。社会福祉法人の理事長の経験から障害福祉サービスを受けている利用者が65歳になるとサービスが異なってしまう事はおかしい。浅田訴訟に続く勝利を!」と訴えました。 障全協の副会長の市橋さんは、「提訴から10年になるこの訴訟、天海さんの勇気によって最終段階に入っている。自治体は障害者の命を守るのが仕事なのに切り捨てた。最高裁は、優生保護法と同様、国民の権利に適った判断をしてほしい。障害者の暮らしを見つめて正しい判断を!」と訴えました。 きょうされん多田さんは、「7月3日に優生保護法裁判で 『尊厳と人権を踏み躙ると断じた』想像を超える素晴らしい判決が出された。戦後、様々な差別的対応をしてきた法律が作られてきた。これらを無くす取り組みにつながるもの。65歳問題もその一つ。厚労省通知に基づかない自治体がある。みんなで頑張り改善しよう。」と訴えました。 障全協家平さんは、「65歳問題の介護優先問題は自らどのようなサービスを使うのかと言った選択できる制度にしてほしいと要望してきた。厚労省は無理なことを強いらず丁寧な対応もとめているが、多くの自治体は厚労省通知に習っているが、一部の自治体は、法7条を根拠に65歳になった障害者に強制、恫喝し、移行を迫っている。最高裁にはまっとうな判断をお願いしたい。」と訴えました。 日本障害者協議会の増田さんは、 「高裁で勝ったのに上告され、提訴から10年もたっている。真っ当な判決を期待したい。協議会に持ち帰りみんなで応援していきたい。」と訴えました。 最後に原告の天海さんは、 「障害福祉サービスでやっと生活してきたのに全て壊された。介護保険で生活できるか不安だった。応益負担は障害の重い人ほど負担が増える仕組みで到底容認できない。負担を減らし生活を豊かにすることが大切である。」と訴えました。 天海正克さんの訴え 高齢障害者が生き生きと暮らしていけるように 千葉市は障害者の介護を打ち切るな! 天海訴訟 原告 天海 正克 10年前の2014年7月に介護保険への申請を拒んだら、千葉市は毎日の生活に欠かせな居宅介護をバッサリ切った。まさに何もない砂漠に放り出すように生活のすべを奪っのです。 こうした千葉市を相手に翌年11月提訴した天海訴訟は、千葉地裁で20回以上の口頭弁論を行い2022年1月に判決され、国の経済政策に負け敗訴しました。 私が控訴した東京高裁では2023年3月に、非情な千葉市の処分が暴露され勝訴しました。 千葉市は判決を不服とし最高裁へ上告受理の申請をおこない、最高裁で現在審理中です。 私は千葉市が最高裁に上告した理由がわかりません。 障害者の介護を奪い、人権と尊厳を奪い、くらしを奪ったことを正当化し、正しかったと判決してもらいたいのでしょうか。 私が介護保険への申請を拒んだ理由はふたつあります。 一つは、介護保険に移行すると毎日の生活はどうなるのか、今まで受けていた福祉が続けて受けられるのか、買い物や外出が自由にできるのかなど多くの不安がありますが、千葉市は何の説明もなく申請しろと言わんばかりでした。 一つは、それまでほとんど無料だった介護の利用料が、1割の介護保険利用料が発生し、非課税世帯でも毎月1万5千円の利用料が徴収されることです。 障害者自立支援法が成立したとき、介護保険と同じく1割の応益負担が導入されましたが、障害者の生きる権利を奪う応益負担に反対し、全国の障害者団体が一致団結して勝ち取った介護利用料の無料が、年齢により奪われ、応益負担が復活することは納得できません。 こうした問題を提起した天海訴訟の審理中に、厚労省は介護保険の利用料1万5千円を障害者福祉から給付する、新たな制度を2018年から実施し、千葉県では約4千人の障害者が介護保険の利用料がゼロになっています。 最高裁判所の裁判官におかれましては、千葉市に対し、住民の実態を把握し、納得するまで説明とか懇談をていねいに行い、住民のくらしや命を奪うことのないようきびしくご指示いただきますようお願いいたします。 その上で早急にご審理いただき東京高裁の判決を最終判決とただちに決定していただきますよう心からお願い申し上げます。 最高裁判所第2小法廷 殿 要請文 2014 年、65歳に達した時、千葉市は要介護認定調査に申請しないという理由で、天海正克さんの障害福祉サービスをすべて打ち切りました。天海さんは「砂漠に放り出されたようだ」と当時の気持ちを述べています。本来、地方自治体は、住民のいのちと生活をまもるべきで、反対に、千葉市は天海さんのいのちの危険さえ招いたのです。 天海さんはこうした行政処分は障害のある人の生活保障や生存権保障責任の放棄であるとして 2015 年 11 月に千葉地方裁判所に提訴しました。そして 2023 年 3 月、東京高等裁判所(以下、東京高裁)で逆転勝訴を勝ち取ることができました。現在、千葉市はこの判決を不服とし、最高裁判所にその是非を問うています。 東京高裁は、障害者総合支援法 7 条「介護保険優先原則」が定められているため、市町村はこれに従わなくてはならないのは事実であるとしながらも、65 歳以前に生活保護境界層措置の対象となり、ホームヘルプを利用してきた障害者と非課税世帯の障害者が介護保険に移行した場合には、住民間に制度間の不均衡が生じることを指摘しました。 障害者自立支援法違憲訴訟の和解(基本合意)に基づいて、非課税世帯の障害福祉サービスの利用料は無料となりました。それにより障害福祉制度における生活保護境界層措置の対象は、原則 65 歳未満等で課税世帯の障害者となりました。そして、この措置により、障害福祉サービス利用者の約 8 割を占めるとされる非課税世帯の障害者の場合、介護保険に移行すると最大で月に 15,000 円の利用料が発生します。境界層にある課税世帯の障害者は訪問介護(介護保険)の利用料が無料になるにも関わらず、それより所得の少ない非課税世帯の障害者は利用料負担が発生する、東京高裁はこれを制度的不均衡であると指摘しました。そして、こうした矛盾を「知りながら」、天海さんに対するすべてのサービスを打ち切った千葉市の対応を、同高裁は問題であるとしたのです。 そして、この矛盾を知りつつ、すべて障害福祉サービスを打ち切り、天海さんの生活と生存権を脅かした千葉市の処分は違法であるという判決をくだしました。 この判決は、天海さんに対する自治体の人権保障の責務を明確化したものと言えます。人権保障の最後の砦である最高裁判所におかれましても、以下の要望を受け止めていただいて、東京高裁と同様に公正な判断を行なっていただくよう、心よりお願い申し上げます。 障害者の生活と権利を守る全国連絡 協議会 副会長 市橋博