天海訴訟を支援する会ニュース 2023/12/13 48 千葉市の上告受理申立てに抗議し 最高裁への公平な判断を求める署名を 最高裁判所に届ける 7400筆 11月24日に、皆さんから寄せられた署名7400筆を、最高裁判所に届けました。 ありがとうございました。 最高裁判所で訴えたこと すべての支援を打ち切りは、自治体の市民の生存権保障に反する 住民税非課税世帯の天海正克さんが65歳になった時、千葉市のほうから介護保険へ移るように言われました。しかし天海さんは、障害年金など10万円に満たない収入の中で、介護保険に移ると、これまで無料であった自己負担が1万5千円かかり生活が厳しいということで、介護保険の認定申請をせず、引き続き障害福祉サービスを希望しました。すると千葉市からその申請を却下されまして、これまでの受けていた給付がすべて打ち切られてしまいました。当然生活の上では、ホームヘルプを受けなければならないのですが、そのために10数万円の負担がかかる、それが全部自己負担になりました。これでは到底生活を続けていくことは不可能です。障害者は、支援がなければ生活を成り立たせることは困難です。天海さんはやむを得ず介護保険の認定申請をしたのですが、千葉市のこのような介護保険を強制的に押し付け、介護保険に移行しないならすべての支援を打ち切るというのは、本来の自治体の市民の生存権保障に反することです。 同様の問題として、岡山の浅田訴訟がありますが、浅田訴訟では原告が、地裁でも高裁でも勝訴しています。確かに65歳になると障害者総合支援法7条があって、介護保険が優先されることは原則になっていますが、障害者の生活状況や障害者自立支援法違憲訴訟における基本合意を踏まえて、岡山の浅田訴訟では、支援を打ち切ったことは違法であるという判断をくだしました。それに対して、千葉市のほうは、「国の障害者総合支援法7条に従っただけだ」というのです。東京高裁の判断では、「確かに法7条は国が定めている制度である。けれども合理的配慮は自治体等の義務になっており、合理的配慮の継続支給は可能であるという判断をしています。さらに、制度的不均衡、境界層措置の障害者と非課税世帯の障害者の1割負担の不均衡問題もあるということで、高裁では千葉市の打ち切りを違法としているのです。それに対して、千葉市は、法7条に粛々と従っただけだということで、最高裁判所に「上告受理申し立て」を行い受理されました。 障害者の65歳問題は、法7条だけで、運用されるだけではありません。 厚労省が2007年、2015年に出した事務連絡などがあり、今年の5月にも新しい事務連絡も出されました。そこで求められているものは、介護保険の要介護認定に申請しない障害者に対しては、制度の趣旨を説明し、制度移行の勧奨を続けてくださいと書かれています。打ち切っていいとはどこにも書かれていません。厚生労働省との懇談でも、日本の社会保障の原則である申請主義に従えば、 「要介護認定にしない障害者に対しては、自治体としては、継続してしっかり説明をし、本人が納得したうえで、申請していただくように自治体にお願いをしているのです。」ということでした。お願いですので、千葉市のように介護保険に移らなければ、サービスを打ち切るのはお願いではありません。千葉市が国の指示に従うというのであれば、なぜこの厚労省の様々な事務連絡、通知に基づいた運用をしなかったのか、ここに大きな矛盾があると思います。 境界層措置に基づくホームヘルプの無償化制度があると言ったのは、千葉市側です。そのような制度があることを知ったうえで、天海さんのサービスを打ち切ったということは問題です。国に従ったといいながら、様々な連絡通知を勘案しなかったことの問題があります。 天海正克さんの訴え 高齢障害者が生き生きと暮らしていけるように 私は、2014年7月13日に満65歳になりました。 千葉市から「介護保険を申請するように」と何度も言われましたが、私は加齢に伴い要介護状態となった高齢者の日常生活を支援する「介護保険」は申請せずそれまで受けていた、日常生活社会生活の支援により、社会参加の機会の確保を目的と:する「障害者福祉」の更新を申請しました。 ところが千葉市は障害者福祉の更新を却下し、8月1日からそれまで受けていた月70時間の居宅介護をすべて打ち切りました。日常生活に介護が不可欠な重度の障害者が、全ての介護サービスを打ち切られ、まるで砂漠の真っただ中に放り出されてしまつたような仕打ちを受け、さらに生活を維持するため全額自己負担で介護を受けると月14万の利用料がかかってしまいました。 地方自治体の役割はそこの住民の安全な生活の維持と、福祉の向上に止めることにあると思いますが、千葉市は障害者の生活を顧みず「行政の手続に協力しない障害者はこのような状況に置かれるのは当然である」と言わんばかりの態度でした。 障害者権利条約や障害者総合支援法の規定にあるように、障害者がどこに住み、どんな生活を送るかは障害者自身が決定することです。私が問うているのは、要介護認定調査ヘの申請をしないことを理由に、障害者の福祉サービスをすべて打ち切ってよいのか。自治体が障害者の生存権保障を放棄してよいのかということです。 障害者が自立した社会参加を望むのであれば、障害福祉サービスの給付を継続すべきで65歳になったからといって、障害者福祉給付を打ち切ることは許されないことだと思います。東京高裁では、障害者権利条約や障害者総合支援法の理念に沿つた判決でした。また、介護保険に移行すると、1割の利用料負担がかかってしまいます。障害者自立支援法が成立したとき、障害者福祉にも介護保険と同様に利用料負担が生じました。しかし全国の障害者や家族等が「なぜ食事や買い物・着替えなどに金がかかるの」「障害が重いほど利用料がかかる応益負担に反対」と運動が広がり、全国から障害者自立支援法訴訟が起こされる中で障害者福祉の利用料は非課税世帯は無料となりました。65歳で介護保険に移行することで利用料負担が復活してしまいます。働く機会がきわめて少ない障害者にとつて、高齢になっての新たな負担は毎日の生活を脅かします。障害者が必要な介護を受け、いきいきとくらしていけるように最高裁判所の公正な判断.をお願いいたします。 障害者がどこに住んで、どんな生活を送るのかということは、障害者である天海さん自身が決定することであって、要介護認定調査や認定をしなかったということで、それまで利用していたサービスをすべて打ち切るというようなことは許されないことです。自治体が障害者の生存権保障を放棄してしまったととらえています。障害者自身が社会参加を望むということであれば、障害福祉サービスを継続すべきであって、65歳になったからと言ってそれを打ち切ることは問題です。障害者の尊厳が守られ、人権が保障されるような判決を最高裁が出してくださることを心から期待しています。 天海正克さんの人権保障を遵守した東京高裁の判決を 尊重し、最高裁判所においても公正な判断を求める 署名活動への協力を引き続きよろしくお願いします。 天海正克さんが、千葉市を相手取って、2015年11月27日に訴訟を起こしてから9年が経過し、東京高裁は2023年3月24日、天海さんの全面勝訴の判決を下しました。この判決は、天海さんに対する自治体の人権保障の責務を明確化したものと言えます。 しかし千葉市は、東京高裁の判決を不服として最高裁判所に上告受理の申立てを行い天海訴訟は最高裁判所で争われることになりました。 この訴訟は、 第一に、65才になると介護保険の利用を優先され、天海さんの場合、1万5千円の負担をしなければなりません。これは、障害者の生存権を脅かす不当なものであり、年齢によって差別するものです。千葉市は、国の言い分そのままに「社会保障は、自助・共助・公助の順に適用されるのが原則」としています。 第二に、千葉市はその他の多くの自治体と異なり、天海さんが介護保険の利用申請を行わなかった際に、障害者福祉のすべての給付を一方的に打ち切り、天海さんは費用の全額を自己負担せざるを得なくなりました。千葉市はただ「法律に定められた通りにやっている」というにすぎません。こうした強制的な行政処分は、許されません。 人権保障の最後の砦である最高裁判所においても、東京高裁と同様に公正な判断をしていただけるように、以下の要望を最高裁判所に届けることになりました。天海訴訟は、国の歪んだ社会保障行政を変えていくたたかいです。皆様のさらなるご支援を心からお願いします。 要望項目 天海さんの人権保障を遵守した東京高裁の判決を尊重し、最高裁においても公正な判断をして下さい。 1.署名の種類 最高裁判への要望署名(別紙) ★署名は「団体署名」と「個人署名」 の2種類です。 2. 集約時期 2024年3月まで頑張ります。 3.署名集約先 天海訴訟を支援する会 〒262-0032 千葉市花見川区幕張町 5-417-222 幕張グリーンハイツ 109 障千連内 TEL・FAX 043−308−6621