天海訴訟を支援する会ニュース44号テキスト版 2023.04.12発行 P1 東京高裁 逆転勝訴! 自治体の役割放棄は違法 4/7 千葉市は自らの非を認めず最高裁へ上告 非道な対応に怒り広がる 4月20日(木) 最高裁勝利を目指して集会を開催!(別紙参照) <写真:東京高裁玄関前 逆転判決の垂れ幕の前で天海原告と八田代表> P2 真の平等の実現を!! 原告 天海正克 3月24日14時 東京高裁100号法廷 3名の裁判官が着席する。 裁判長が判決文を読み上げる。「介護給付費の支給申請を却下する決定を取り消す。」 満席の傍聴席から拍手とざわめきが起こる。千葉地裁の不当判決を取り消し、勝ったのだ。 すべての介護を奪った千葉市の決定は法律違反であることが明らかにされたのだ。 これは生活保護の申請を防ぐために介護保険の用料を免除する境界層措置などの適用を考慮せずに一方的に介護を奪った千葉市の責任を指摘した判決ではないでしょうか。 この勝利判決は弁護団と全国の障害者運動の粘り強い行動と団結で勝ち取った判決である。 北海道から沖縄県まで広がった1万5千筆の要請署名・点字署名と判決直前のハガキ署名。 7年にわたり30回を超える口頭弁論に参加した障害者や民主団体・労働組合の人たち。 汗だくでへとへとでマイクで訴えた夏の日やがちがちと震えながらチラシを配った冬の日。 チラシを見てその場で口頭弁論に参加した人や毎回東京から車いすで参加した障害者、たくさんの人が注目・期待されて勝ち取った勝利判決を逃すわけにはいかない。 ところが千葉市はこの判決を不服として最高裁に上告申立てを行ったという。 このことに大きな怒りを感じるとともに徹底的に闘う意欲が心底わきでてくる。 誤った社会福祉のルール「保険優先原則」「応益負担」をなくし真の平等の実現を? 最高裁で最終的勝利を勝ち取るために最後のご支援を! 天海訴訟を支援する会代表 八田英之  3月24日、東京高裁は天海さんの訴えをほぼ全面的に認める判決を下しました。その理由は、「千葉市の場合、『境界層措置』(障害者支援の給付を受けていた人が、介護保険に移行する場合、介護保険の料金を払うと生活保護を必要とするが、その料金を軽減・免除すれば生活保護が必要ではなくなる場合、行政はその措置を行うことができる制度)によって、介護保険に移行後も自己負担がゼロの人がいる一方、その人より所得が低く、住民税非課税世帯である天海さんは月に1万5千円の負担が掛かる。これは、不均衡であり、千葉市は、社会保障制度の運用において、不均衡を避けることが求められるので、その限度において、障害者福祉サービスを継続できる裁量権を持つ、従って天海さんの請求を認めなかった市の対応は違法である」というものでした。これに対して、千葉市は、4月7日、最高裁へ上告受理の申し立てを行いました。  これは、岡山市が浅田訴訟で上告せず、判決を確定させたことに比べても、千葉市の市民サイドに寄り添わず、行政の都合を押し付ける頑迷な姿勢を明らかにしたものであり、極めて不当なものです。ために、私たちは天海訴訟のたたかいを続けざるを得ません。差し当たり、千葉市に対して「上告するな」の要請をさらに強めましょう。期限内に上告の理由書を提出しなければ、高裁判決が確定します。さらに、最高裁へ「不当な上告を却下してください」と言う取り組みを進めましょう。皆様の最後までのご支援を心からお願いいたします。 P3 東京高裁の判決 自治体の役割と責任を強調 千葉市の福祉サービスはく奪・放置は違法 天海訴訟につきましては、裁判の傍聴、活動資金援助、裁判所への署名など物心両面のご協力に感謝申し上げます。ありがとうございます。 3月24日、東京高等裁判所は原告天海正克さんの訴えを認め、原告全面勝訴の判決を下しました。その内容は 1.障害者総合支援法の申請却下決定を取り消すこと 2.障害者総合支援法の規定による身体介護、家事援助の支給決定をせよ 3.国家賠償法に基づき、ホームヘルプ利用料自費負担分、慰謝料等を支払え  などです。  千葉市長は、この判決を厳粛に受け止め、直ちに判決事項を実行すべきです。  また、9年にわたる原告天海さんの苦しみを、さらにこれ以上長引かせることの無いよう、最高裁判所へ上告せず、裁判を終結すべきです。  しかし4月7日、千葉市長は最高裁へ上告の手続きを取りました。自らの過ちを認めない千葉市の対応は許せません。市民生活を守るべき自治体の役割を放棄するものと言わざるを得ません。 支援する会としては最高裁での勝訴を勝ち取るため、引き続き取り組みを続けます。  東京高裁の判決文の概要は4ページのとおりです。天海さんが提訴した請求項目は慰謝料金額が請求よりも低かった点以外は判決主文のとおり認められましたので、全面勝訴と言えます。  弁護団のご尽力と支援する活動に積極的に参加していただいた皆様に深く感謝いたします。判決報告集会では弁護団の坂本弁護士から「支援の大きな声が裁判を動かした。このような裁判を初めて経験した」との発言もいただきました。  ただ、判決理由を見ると「介護保険優先原則が妥当」との判示や憲法、権利条約については深い吟味を回避し「立法府の広い裁量」などと退けている点は残念なことで我々としては受け入れがたいことです。今後の運動で克服すべき課題です。  ではなぜ勝訴になったのか。天海さんよりも所得が高く境界層措置を受けていた障害者は介護保険に移行後も無料であるにもかかわらず、65歳前無料であった天海さんが移行後月1万5千円の利用料がかかるという事態になった。この不均衡状態を避けるべき千葉市が、何もせず放置したことは違法であると高裁は判断したのです。  判決理由の中で見るべきものもあります。それは、千葉市は「域内の住民のための社会保障を担っており」不均衡を避けることが求められる、と自治体の役割と責任を強調していることです。また天海さんが65歳時に千葉市に提出した「介護保険を申請しない理由書」のなかで介護保険の利用料負担が生ずることを記載しているのだから、千葉市は容易にそのことを知ることができたはずだと判示し、何らの策も講じなかった千葉市の無責任を指摘していることです。  長期に戦ってきた天海訴訟の逆転勝訴の判決、今後に残された課題などについて分析する必要があります。また最高裁での取り組みをどのように行うかについても考えたいと思います。総括集会を行いますので、多数ご参加ください。(三橋 恒夫) P4ーP5 天海訴訟判決要旨 東京高裁作成 令和5年3月24日午後2時判決言渡し(101号法廷) 東京高等裁判所 第20民事部  (裁判長裁判官 村上正敏 裁判官 内堀宏達 裁判官 鈴木拓児) 令和3年(行コ)第170号 行政処分取消等請求控訴事件 判決要旨 控訴人 天海正克 被控訴人 千葉市 主文  1 原判決を次のとおり変更する。  (1)被控訴人が平成26年8月1日付けで控訴人に対してした障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律20条1項の規定による介護給付費の支給申請を却下する決定を取り消す。  (2)被控訴人は、控訴人に対し、平成26年7月8日付け障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律20条1項の規定による介護給付費の支給申請について、サービスの種類を居宅介護、サービスの内容及び支給量を身体介護月45時間、家事援助月25時間とする介護給付費の支給決定をせよ。  (3)被控訴人は、控訴人に対し、27万4240円及びこれに対する平成26年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。  (4)控訴人のその余の請求を棄却する。  2 訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを5分し、その2を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由の要旨  1 事案の要旨  控訴人(昭和24年生)は、千葉市に居住する障害者であり、被控訴人から、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)による障害福祉サービス(居宅介護)の介護給付費を受給していた。控訴人は、65歳に達するに際し、被控訴人に対し、障害者総合支援法による介護給付費の支給申請(本件申請)をしたところ、被控訴人がこれを却下する本件処分をした(その理由は、控訴人は、介護保険法による居宅サービスの一つである訪問介護を受けることができるところ、同法による要介護認定の申請をしないために居宅サービスの支給量を算定することができず、同サービスでは不足するために上乗せすべき障害者総合支援法による介護給付の支給量も算定することができないというものである。)。  控訴人は、本件処分は違法であるとして、被控訴人に対じ、@本件処分の取消し、A本件申請についての介護給付費の支給決定の義務付け及びB国家賠償法1条に基づく損害賠償を求めた。  原審(千葉地方裁判所)は、Aの介護給付費の支給決定の義務付けの請求に係る訴えを却下し、控訴人の@及びBの請求をいずれも棄却したところ、控訴人が請求全部の認容を求めて控訴した。 2 当裁判所の判断の要旨 (1)障害者総合支援法7条は、介護保険優先の原則を定めており、65歳に達する障害者について、介護保険法による介護給付であって、障害者総合支援法所定の自立支援給付に相当するものを受けることができるときは、受けることができる給付の限度で自立支援給付は行われないことになる(市町村の裁量的判断によって障害者総合支援法に基づく自立支援給付を継続することができるとはいえない。)。控訴人についても、従前受けていた障害者総合支援法による居宅介護と介護保険法による訪問介護とはおおむね符合するから、「自立支援給付に相当するものを受けることができる」状況にあったと認められる。 (2) ところで、控訴人は、本件処分後、要介護認定の申請をして介護保険に移行した(不足する渥の自立支援給付も受けている。)が、月額1万5000円の介護保険の自己負担分が生じている。 しかし、障害者総合支援法による居宅介護を受けていた障害者のうちには、低所得者等を対象とする境界層措置により利用料を負担しておらず、65歳に達して介護保険に移行した後も、支援措置によって介護保険サービスの利用料を全額免除されている者があるところ、控訴人は、もともと非課税世帯であるために上記境界層措置を受けるまでもなく自己負担がなかったことから、介護保険に移行しても上記支援措置の対象とならず、逆に自己負担が生じているという障害者相互の不均衡が生じている。  このような状況下で、控訴人の本件申請(障害者総合支援法による介護給付費の支給申請)を却下することは、制度に由来する障害者相互の不均衡を固定することになるから、被控訴人は、このような不均衡を避けるためという限度においては、障害者総合支援法による自立支援給付を継続することができる裁量権を有すると考えられる。そうすると、本件申請を却下した本件処分は、違法であり、取り消されるべきである(主文第1項(1))とともに、被控訴人は、本件申請について、従前と同内容の自立支援給付決定をすべきであった。(主文第1項(2))。  さらに、本件処分は違法であるから、被控訴人は、控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき、27万4240円(控訴人が自ら支出したホームヘルプサービスの利用料合計14万9240円、慰謝料10万円及び弁護士費用2万5000円の合計)及び遅延損害金を支払うべきである(主文第1項(3))。                          以上 P6 (総括集会案内チラシ) 天海訴訟逆転勝訴 総括集会 自治体の役割は何? 最高裁の戦い! 原告の天海さんが介護保険申請を断ったことへの制裁として、千葉市がすべての福祉サービスを剥ぎ取り、天海さんのライフラインは遮断されました。やむなく月14万円以上の全額自費で介護を受けざるを得なくなりました。天海さんは千葉市のやり方は住民の命と生活を守るべき自治体のやることではない、と提訴。しかし千葉地裁では敗訴となり、東京高裁へ控訴、審議の結果、2023年3月24日の判決で逆転勝訴となりました。判決事項は 1.障害者総合支援法の申請却下決定を取り消すこと 2.障害者総合支援法の規定による身体介護、家事援助の支給決定をせよ 3.国家賠償法に基づき、ホームヘルプ利用料自費負担分、慰謝料等を支払え  など全面勝訴です。 しかし千葉市は判決に従わず、最高裁へ上告。高裁で判示された自治体の役割と責任に正面から向き合おうとはしていません。このような千葉市の対応に怒りが広がっています。今後の課題を明らかにし上告審での勝利を目指して再度立ち上がることが求められています。 多くの皆さんのご参加をお待ちしております。 千葉市の上告に怒り広がる 2023年4月20日(木)午後3時  参議院議員会館 B107号室 集会はオンライン配信します。手話通訳あります。 参加申し込みアドレス      https://onl.sc/KXXypkH 会館入り口で支援する会担当者から入館証を受け取ってください。 天海原告のあいさつ、弁護団から判決内容の分析・解説、質疑、福祉関係者や支援者の発言などを予定しています。 参議院議員会館案内  地下鉄丸ノ内線「国会議事堂前」下車 1番出口または 2番出口(エレベータ有)から徒歩5分 または地下通路で議員会館へ (ニュース44号ここまで) メーリングリスト参加のお願い メールをお使いの方は、天海訴訟を支援する会のメーリングリストにぜひご参加ください。 ニュース配布、連絡、意見交換などに有用です。 ニュースに対するご感想、ご意見などお寄せください。 amagaisoshou@gmail.com あてにメールしてください。 ◎ご投稿をお待ちします。 天海訴訟を支援する会 262−0032 千葉市花見川区幕張町5-417-222 幕張グリーンハイツ109 障千連内 TEL・FAX  043−308−6621 http://amagai65.iinaa.net/ amagaisoshou@gmail.com 郵便振替 00260-0-87731 「天海訴訟を支援する会」 天海訴訟は、全国の65歳を迎える障害者共通の問題 支援の輪を広げてください この訴訟は全国の障害者共通の問題です。またこれまでに積み上げてきた障害者福祉制度の後退を食い止める裁判です。この訴訟に勝利するためには、世論の高まり、国民の皆さまのご協力が必要です。