天海訴訟を支援する会ニュース42号テキスト版 2023.01.25発行 P1 12/9結審は  傍聴席満席! 3月24日に判決 12月9日に控訴審第6回口頭弁論が行われましたが、それに先立ち署名追加分156筆を届け、署名数総計11,588筆となりました。裁判所にの話では、要請ハガキも多数届いているとのことです。 東京高等裁判所101号法廷は定員86名。車いす傍聴席は6ですが希望者11名で定員オーバーとなりました。5名の方に一般席に移っていただき、傍聴席は満席となりました。傍聴には、遠く京都、愛知から、また神奈川、埼玉、千葉からも参加がありました。東京では、きょうされんの仲間がイベント終了後に多数駆けつけてくれました。 口頭弁論では天海原告の「障害者の尊厳が守られ、人権が保障されるような判決を下さるよう心から期待します」との最終意見陳述(3ページ)に続き、原告代理人弁護士からスライドも使用して「障害者権利条約に即したご判断をお願いしたい」と最終意見陳述(4ページ以降)が行われました。 裁判長から本日(12/9)を結審とし、2023年3月24日金曜日に判決すると伝えられました。 報告集会には、会場、オンライン合わせて、160名の参加がありました。 千葉土建の繻エ厚さん 浅田訴訟原告の浅田達雄さん 全国肢体障害者団体連絡協議会会長の渡邊覚さん 「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラムの古賀さん 日本障害者協議会(JD)の薗部さん 全国障害者問題研究会副委員長の中村尚子さん 明治学院大学名誉教授の河合克義さん 日本医療労働組合連合会の寺田さん 全日本民医連 事務局次長の山本さん 中央社会保障推進協議会事務局長の林信悟さん 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会 事務局長の家平悟さん から支援、応援の熱い発言をいただきました。 傍聴に、報告集会に、皆様お疲れさまでした、ありがとうございました。 次回3/24は判決です。 高齢になれば福祉制度が手厚くなるのが当たり前です。逆に利用料が有料になる、サービスが低下するというのは理不尽なこと。憲法と障害者権利条約を尊重した、障害者の生活を重視した判決をもらいたいと切に願います。 裁判官宛の要請はがきは、支援する会会員、障全協各団体、きょうされん等の支援団体に大きく広がり、1月19日時点で5,000枚近くまで広がっています。、署名は引き続き取り組んでいますので、よろしくお願いいたします。 はがき要請行動にご協力を! すでに署名を1万筆超提出済みですが、結審、判決を迎えるにあたり、新たな行動として、はがき要請行動に取り組んでいます。世論の高まりを裁判官に知ってもらう新たなインパクトとしたいと考えます。署名も引き続き取り組みます。すでに署名にご協力いただいた団体、個人の皆様もはがきを出してください。(8ページをご覧ください) P2 判決は3/24(金) 東京高等裁判所 午後 1時 裁判所前で集会 2時30分 開廷 101号法廷(1階) 4時00分 報告集会: 衆議院第2会館(※ いつもと違う場所です)  コロナ感染拡大のため、報告集会はオンライン配信を基本とします。 視聴申し込みアドレスなどは別途ご案内します。 会費・カンパのお願い これまでに多くの団体・個人の方から会費、寄付金をお寄せ頂いています。ありがとうございます。 東京高裁での審理は結審し、3/24に判決が言い渡されます。結果は予断を許しませんが、どちらになっても最高裁での戦いが続く可能性があります。裁判費用、支援活動の経費等に充てるため、ご協力をお願いいたします。 振込用紙を同封しました。ご協力をお願いいたします。 振込先:〒振替 00260-0-87731 「天海訴訟を支援する会」 通信欄に「会費」「カンパ」等を、またメッセージなども一言あるとうれしいです。 <写真あり:2022.12.9 第6回口頭弁論開始前の呼びかけ行動 東京高裁前の風景> P3 障害者の尊厳が守られ 人権が保障される判決を 最終意見陳述   天海 正克 原告 私は、2014年7月13日に満65歳になりました。 千葉市から「介護保険を申請するように」と何度も言われましたが、私は、日常生活・社会生活の支援により、社会参加の機会の確保を目的とする「障害者福祉」と、加齢に伴い要介護状態となった高齢者の日常生活を支援する「介護保険」には違いがあることや、介護保険を利用すると15,000円の自己負担が生じるので、介護保険申請を断りました。 自己負担が生じることについては、自立支援法違憲訴訟団が国と「基本合意」をした成果が無駄になることも話しました。 そうしたら、8月1日から全ての介護サービスが打ち切られ、全額自己負担となり、月14万円もの利用料がかかってしまいました。泣き寝入りはできないと2015年11月に千葉市を相手に千葉地裁に提訴しました。 ところが、千葉地裁は私の訴えを棄却しました。千葉地裁の判決は、憲法だけでなく、国と原告の約束である「基本合意」を考慮することなく、厚生労働省の通知や事務連絡までも無視するものでした。 日常生活に介護が不可欠な重度の障害者が、全ての介護サービスを打ち切られ、まるで砂漠の真っただ中に放り出されてしまったような仕打ちを受けたにもかかわらず、千葉地裁の判決、障害者の生活を顧みず「行政の手続に協力しない障害者はこのような状況に置かれるのは当然である」と言わんばかりの内容でした。 本当に残念でした。そこで、東京高裁に控訴しました。 障害者権利条約や障害者総合支援法の規定にあるように、障害者がどこに住み、どんな生活を送るかは障害者自身が決定することです。私が問うているのは、要介護認定調査への申請をしないことを理由に、介護保険の対象になった障害者の福祉サービスをすべて打ち切ってよいのか。自治体が障害者の生存権保障を放棄してよいのかということです。 障害者が自立した社会参加を望むのであれば、障害福祉サービスの給付を継続すべきで、65歳になったからといって、障害者福祉給付を打ち切ることは許されないことだと思います。 東京高裁では、障害者権利条約や障害者総合支援法の理念に沿った判断をしていただきたいと思います。 おりしも本日12月9日は、1975年に国連総会で障害者権利宣言が採択された日です。さらにわが国の国際障害者年推進本部は、1981年に12月9日を障害者の日とした歴史的な日です。  障害者の尊厳が守られ、人権が保障されるような判決を下さるよう心から期待しております。 P4-6 生きる権利を奪わないで! 障害者権利条約に沿った判決を 代理人最終意見陳述 控訴人天海さんの主張は、一言でいうならば「生きる権利を奪わないで!」ということです。 代理人から法的なことを補足いたします。 本件では、千葉市の処分が行政裁量を超えて違法になるかどうかが争点になります。 代理人がお伝えしたいことは、そもそも行政裁量とは、根拠法令の趣旨・目的に沿ってなされなければならないということです。 本件の処分の根拠法令は障害者総合支援法になります。 障害者総合支援法は、障害者が個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう必要な障害福祉サービスに係る支援を総合的に行うことを目的としています。 ですから、いくら行政に裁量があるとはいえ、個人の尊厳にふさわしい社会生活を営むことができるかという観点から裁量判断すべきことになります。 そして、我が国は、障害者権利条約の批准国ですから、障害者総合支援法の解釈・適用をする際には、障害者権利条約の趣旨に沿ってなされなければなりません。 障害者権利条約の趣旨に合致しない場合には、適切に裁量権が行使されたとは言えません。 ここで、どうしても裁判所にお伝えしたいことがあります。 障害者権利条約5条が保障している「平等」についてです。 甲51号証で提出した図をご覧ください。 左側の図では、3名全てに対して、同じ高さの台を提供しています。一見、これこそが「平等」であるかのように思えます。 ただ、一番左の大きい人は、台がなくても野球観戦ができますが、一番右の小さい人は、台が一つだけあっても、十分に野球観戦を楽しむことができません。 これでは、真の意味の平等が達成されたとは言えないのです。 障害者権利条約が保障する平等とは、それぞれの個別の事情に即して必要な配慮を提供して、全ての人が平等に社会参加の機会を享受できるようにすることです。 一番右の人は台が2つない限り、他の人と平等に野球観戦をすることができないのですから、右側の図のように、台を2つ提供する必要があるのです。 台がなくても野球観戦を楽しめる人には、あえて台を提供しなくても良いのです。これでようやくイーブンになるということです。 一番右の人ばかり2つも台を使うことが不公平だとは言いません。 千葉市は、第一審から、障害者と同等の介護サービスを受ける他の65歳以上の人が1割の自己負担をしているのに、障害者だけが障害者総合支援法による障害者福祉サービスを受け、低額な自己負担を負担することを許容するとすれば、両者の間に不公平が生じるのだと主張しています。 これは、まさに、左側の人も1個で我慢しているのだから、右側の人も1個で我慢しないと不平等だと言っているに等しいのです。 これは、障害者権利条約5条に反する論理になります。 裁判官にお願いがあります。 障害者が権利を主張することをわがままだと思わないでください。 天海さんは、なにも願望をすべて叶えてくれと言っているわけではないのです。最低限、障害がない人と同じように尊厳が保たれた社会生活を営むことを望んでいるのです。生きる権利を奪わないでほしいのです。 東京高等裁判所におかれましては、ぜひ、障害者権利条約に即したご判断をお願いしたいと思います。 以上です。 P7 こんなに差がある障害福祉と介護保険 厚生労働省は私たちに「介護保険でも障害福祉と『同様のサービス』を受けられる場合は、介護保険を優先して適用する」と説明しています。しかし実際に介護保険を利用している障害者からは「介護保険は不便。やってもらえないことが多い」との声が寄せられています。 そこで家事援助に絞り、障千連を通じて千葉県の担当課(障害福祉事業課、高齢者福祉課)に質問(可能は〇、不可は×を付してください)したところ、次の表のような回答でした。障害福祉と介護保険ではこれだけ大きな差が生じています。単純に「同様のサービス」とは言えないのが実態です。やはり65歳を過ぎても障害福祉サービスの利用を継続する必要があります。各都県の実情は如何なのでしょうか。県回答をわかりやすくするため条件を「障害者の単身世帯」に限定して書き直しました。回答原文は別にあります。(文、表 作成責任 三橋恒夫) 家事援助項目 障害福祉 介護保険 季節の衣替え 〇 〇※2 風呂場換気フィルター交換 〇 ×※3 換気フィルタの上の方の掃除 〇 ×※3 押入れの上の方の掃除 〇 △※3 神棚の掃除 〇 ×※3 扇風機の掃除 〇 ×※3 冷蔵庫の掃除 〇 △※3 玄関の中の掃除 〇 △※2 玄関の外の掃除 〇 △※4 エアコンの掃除 〇 ×※3 カーテンの取り外し 〇 △※3 車イスの空気入れ 〇 △※2 暖房器具の掃除 〇 ×※3 金融機関の書類の代筆 〇 ×※5 脚注 【障害福祉】 ※1 単身の世帯に属する利用者又は、家族若しくは親族(以下「家族等」という。)と同居している利用者であって当該家族等の障害、疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるもの。 ※1 支給決定権者である市町村において、居宅介護サービス利用者に対し、予め家事援助サービス提供の必要性を判断いただいた上で、支援いただくことが原則であることに留意。 【介護保険】 ※2 生活援助とは、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものをいう。ただし、商品の販売・農作業等生業の援助的な行為、直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為は、生活援助に含まれない。 ※3 日常的に掃除をしない場所の掃除は、「大掃除」に該当し、「大掃除」は日常生活の援助の範囲を超えるサービスとして介護保険上の生活援助に該当しない。 ※4 一般的に庭の掃除や草むしりは日常生活の援助の範囲を超えるサービスにあたるため、同様に家の外である玄関先の掃除は生活援助に該当しない可能性ある。 ※5 代筆は、日常生活の援助、身体介護ともに該当しない。 (※(注意書き)は県回答のまま) P8 東京高裁での公正な判決を求める 署名運動・「要請はがき」運動へのご協力のお願い 原告 天海さんは2014年8月、65歳になった際、要介護認定調査に申請をしなかったという理由で、千葉市から障害福祉サービスの更新を却下され、全サービスが打ち切られました。天海さんは千葉地裁に提訴。2021年5月千葉地裁は天海さんの主張を全面却下ました。その判決は「日本の社会保障の基本は社会保険方式が優先である(「自助・共助・公助」)」、「他の者との公平性」という法的根拠のない政府の方針を大前提に、千葉市の障害福祉サービスの打ち切りを介護保険法の規定を流用して容認するものでした。天海さんは東京高裁に控訴。12月9日の第6回 口頭弁論で結審となり、3月24日に判決が出ます。私たちは千葉地裁の判決を高裁で確定させないためにも、逆転勝訴を勝ち取らなければなりません。そのためには、法廷での戦いだけでなく、この問題を社会化し、より多くの方から応援をしていただく必要があると考えています。 この実現に向けて、当会はこれまで署名運動を行ってきました。今後は、「要請はがき」運動にも取り組んでいく所存です。社会保障・社会福祉制度に係る問題は山積しているため、積極的なご協力をいただけると幸甚に存じます。 ※署名運動・要請はがき運動の取り組みについて ・期 限…2023年2月28日 ・署名について…署名した署名用紙を、天海訴訟を支援する会事務局まで送ってください。 ・要請はがきについて…私の一言、氏名(団体名)、住所を記入し、ポストに投函してください。 <団体などで取り組んでいただける場合は、ご連絡ください。ご相談に乗っていただけるとありがたいです。すでに署名済みの団体、個人も「要請はがき」を出してください> はがきおもて 100-8933 東京都千代田区霞ヶ関1の1の4 東京高等裁判所 第20民事部 令和3年(行コ)第170号 裁判長 村上正敏 殿 裁判官 内堀宏達 殿 裁判官 鈴木拓児 殿 はがきうら 障害者の尊厳が守られ、人権が保障される判決を 障害者が65歳等になって要介護認定の申請をしないことを理由に、自治体が介護をすべて打ち切ることは、憲法25条の生存権保障・国連障害者権利条約に抵触すると私たちは考えます。尊厳と人権が保障されるように、天海訴訟への公正な判決を求めます。 (私の一言) 氏名(団体名) 住所 (ニュース42号ここまで) メーリングリスト参加のお願い メールをお使いの方は、天海訴訟を支援する会のメーリングリストにぜひご参加ください。 ニュース配布、連絡、意見交換などに有用です。 ニュースに対するご感想、ご意見などお寄せください。 amagaisoshou@gmail.com あてにメールしてください。 ◎ご投稿をお待ちします。 天海訴訟を支援する会 262−0032 千葉市花見川区幕張町5-417-222 幕張グリーンハイツ109 障千連内 TEL・FAX  043−308−6621 http://amagai65.iinaa.net/ amagaisoshou@gmail.com 郵便振替 00260-0-87731 「天海訴訟を支援する会」 天海訴訟は、全国の65歳を迎える障害者共通の問題 支援の輪を広げてください この訴訟は全国の障害者共通の問題です。またこれまでに積み上げてきた障害者福祉制度の後退を食い止める裁判です。この訴訟に勝利するためには、世論の高まり、国民の皆さまのご協力が必要です。