天海訴訟を支援する会ニュース38号テキスト版 2022.7.27発行 P1,P2 経済的負担は介護保険を申請しない正当な理由 第4回口頭弁論で主張  東京地方が連日の猛暑の中、7月1日に東京高等裁判所で4回目の口頭弁論が開かれました。傍聴に駆けつけてくださった皆様、報告集会会場参加、ライブ配信視聴の皆様、暑い中大変ありがとうございました。 裁判で原告弁護団は 1 天海さんは介護保険に強制移行されれば非課税世帯の軽減措置を受けても毎月1万5千円は負担しなければならなくなる。 2 障害福祉において、課税世帯で自己負担額(4,600円または9,300円)をしていた障害者が介護保険に移行した場合は軽減措置により自己負担が0円になるが、天海さんは非課税世帯であり当初から障害福祉の自己負担はゼロだったので、この措置は受けられない。所得の低い非課税世帯の障害者が介護保険移行後は1万5千円の負担が生ずるという、逆転現象が生じている。矛盾した制度になっている。 3 天海さんが介護保険の申請を拒む正当な理由があった。 このような制度事情の説明も含め、経済状況の聞き取りもせず、障害福祉を全部却下した処分は違法である。 4 藤岡毅証人の証人尋問を採用すべきである。 障害者自立支援法違憲訴訟が提訴された経緯や、国と締結した基本合意の内容も無視することはできず、障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団の事務局長である藤岡毅証人の尋問によって詳細を明らかにする必要性は高い。 と主張しました。  しかし、裁判長は証人尋問の必要はないとの判断を示しました。  被告千葉市からは反論の発言はありませんでした。  天海さんの日常生活、ヘルパーの介助の様子が上映されました。  閉廷後に参議院議員会館に移動し、報告集会が行われました。原告の天海さんをはじめ、支援する会代表の八田さん、向後弁護団長をはじめ坂本弁護士などの弁護団の弁護士、支援する会の皆さんなどが参加しました。  八田代表から「本日は珍しく裁判官の発言が多かった」とあいさつの中で報告がありました。  向後弁護団長から「裁判長から『境界層軽減措置の有無は、千葉市の手続き違法性判断に影響あるか』との問いがあった。千葉市は影響ないという判断だろう。原告からは準備書面を出す。その中で意見を述べたい。藤岡弁護士の証人尋問は行わないと裁判長から言われた」と説明がありました。  坂本弁護士からは「課税世帯が軽減措置で0円になるのに、天海さんのような非課税世帯が毎月1万5千円負担する逆転現象は制度の矛盾。1万5千円の負担の重みを千葉市が全く考慮しなかったのは、手続き上違法であると主張したい。これでは違憲訴訟の成果がないものになってしまう。藤岡意見書は正式な証拠として裁判所が受け取っているので、証人尋問されないのは残念だが、裁判所の判断材料にはなっている。次回の準備書面では、障害者運動の(経済負担が軽減された)成果を書く」と説明がありました。  障害者総合支援法では、定率負担分も実費も境界層措置で減額されますが、介護保険法では、境界層措置の対象が保険料未納分についての対応と実費だけで、定率負担分は対象になっていないため減額されません。  また天海さんの日常を記録した動画が裁判所に提出されましたが、その一部、短縮版が報告集会でも上映されました。 次回で結審?  参加者から「次回で結審か?」との質問に対し、向後団長は「原告側から準備書面6を提出する。被告千葉市がそれに反論しなければ結審になる可能性が高い。判決はその2〜3か月後になると見込まれる」と説明がありました。  また坂本弁護士から「控訴審では通常口頭弁論は1回程度。高裁でこれだけ開かれるのは珍しい。それだけ裁判官が関心を寄せているのだろう。経済的負担が介護保険を申請しない正当な理由に当たるのか否か、これが大きな争点。『正当な理由』の解釈は裁判官によっても差がある。浅田訴訟の岡山地裁判決、広島高裁判決では経済的負担を正当な理由と判断している」と解説がありました。  天海原告から「勝訴を目指して頑張りたい」とあいさつがありました。  報告会の様子はZOOMによりライブ配信され、会場来場者と合わせて全国約100人の方が参加・視聴しました。  引き続くご支援をお願いいたします。 第5回口頭弁論 10/14(金) 東京高等裁判所 午後 1時 裁判所前で集会 2時30分 開廷 101号法廷(1階) 3時30分 報告集会: 参議院会館(予定)  コロナ感染拡大のため、報告集会はオンラインライブ配信を基本とします。 ライブ視聴申し込みアドレスなど詳細は次号ニュース等でお知らせします。 憲法と法律に基づく公正な判決を求める 署名活動にご協力を 皆様のご支援を受け、すでに1万筆をこえる署名を東京高等裁判所へ提出済みですが、さらに上積みを目指します。国民の大きな声で、公平な判決を求めます。 同封の要請文、署名用紙をご覧ください。ご協力をお願いいたします。 締め切り 9月30日 支援する会へ郵送してください。 P3、P4 自己負担(1万5千円)は死活問題、 障害者福祉の継続主張は正当な理由 原告準備書面(5)で主張 <控訴審 原告準備書面5を紹介します> 1 求釈明に対する被控訴人の回答の整理 令和4年6月10日付被控訴人準備書面(4)の回答によれば、介護保険制度における境界層措置は、その適用を受けたとしても自己負担額が15,000円未満にはならない制度である一方で、障害者福祉制度における境界層措置は、自己負担額が0円まで軽減されることがある制度である。 そして、ホームヘルプサービス利用者に対する支援措置は、介護保険移行後の自己負担が0円まで軽減される制度であるところ、障害者福祉制度における境界層措置を受けていた者のみが対象になる制度である。 障害者福祉制度における境界層措置の主な対象者は、障害者総合支援法上のサービス利用の自己負担額が4,600円か9,300円になる収入層の障害者であり、控訴人のように、非課税世帯であるために、当初から障害者福祉サービスの自己負担が0円であった障害者は、障害者福祉制度における境界層措置の適用を受ける余地はない。 結局のところ、控訴人は、介護保険移行を強制された場合、自己負担額が15,000円を下回る軽減措置を受けることはできないことになる。   2 控訴人が介護保険の申請を拒むには正当な理由があったこと。 それを前提にすると、現行制度においては、障害者総合支援法上のサービス利用の自己負担額が4,600円や9,300円になる収入層の障害者が、ホームヘルプサービス利用者に対する支援措置によって自己負担が0円になる一方で、それよりも収入が低い非課税世帯の障害者は、介護保険移行後は15,000円の自己負担を余儀なくされる現象が生じることになる。 このような現行制度の下では、非課税世帯の控訴人とって、15,000円の自己負担が生じることは死活問題であり、控訴人が自立支援給付の継続を希望し、介護保険に係る申請をしなかったのは、正当な理由があると言える。繰り返し引用している岡山地裁判決(甲23)、広島高裁判決(甲27)と同様の事案である。 それにもかかわらず、控訴人が15,000円の自己負担が生じることで介護保険の申請を躊躇していることを認識しながら、丁寧に控訴人の経済状況の聞き取りをせずに、控訴人の申請を全部却下した本件処分は違法であると言わざるを得ない。   3 藤岡毅証人の証人尋問を採用すべきである。 本件では、控訴人が介護保険を利用した場合に15,000円の自己負担が生じることについて、被控訴人が丁寧な聞き取りや検討をせずに申請を全て却下したことが処分の違法性の争点となっている。 本件却下処分の違法性の判断にあたっては、サービスを利用した分の1割の自己負担を求めることとした障害者自立支援法(平成17年成立)に対して、平成20年10月に違憲訴訟が提訴され、平成22年1月7日には原告側の主張を認める形で国と基本合意を締結した経緯や、国との基本合意の内容を踏まえることが重要である。 本件処分を許容してしまったら、違憲訴訟の結果、所得に関わらず利用したサービスに応じて1割を障害者に負担させる応益負担条項を廃止する法改正をすることになった経緯を反故にすることになる。 そのため、障害者自立支援法違憲訴訟が提訴された経緯や、国と締結した基本合意の内容も無視することはできず、障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団の事務局長である藤岡毅証人の尋問によって詳細を明らかにする必要性は高い。 以上により、控訴人としては、藤岡毅証人の証人尋問を採用することを、再度要請する次第である。 以 上 掲載写真の説明 P3 原告天海正克さんの顔写真、 P4 7月1日開廷に先立ち 東京高等裁判所前で裁判の意義を訴えました ニュースNO38はここまで メーリングリスト参加のお願い メールをお使いの方は、天海訴訟を支援する会のメーリングリストにぜひご参加ください。 ニュース配布、連絡、意見交換などに有用です。 ニュースに対するご感想、ご意見などお寄せください。 amagaisoshou@gmail.com あてメールしてください。 ◎ご投稿をお待ちします。 天海訴訟を支援する会 262−0032 千葉市花見川区幕張町5-417-222 幕張グリーンハイツ109 障千連内 TEL・FAX  043−308−6621 http://amagai65.iinaa.net/ amagaisoshou@gmail.com 天海訴訟は、全国の65歳を迎える障害者共通の問題 支援の輪を広げてください この訴訟は全国の障害者共通の問題です。またこれまでに積み上げてきた障害者福祉制度の後退を食い止める裁判です。この訴訟に勝利するためには、世論の高まり、国民の皆さまのご協力が必要です。